休日夜間応急診療所の委託料を検証 ― 年間約1億円の使途が不明瞭、11年間で約17.6億円の支出
令和8年9月定例会では、予算決算委員会の厚生消防分科会(9月16日)および総括質疑(9月28日)において、奈良市立休日夜間応急診療所の運営経費と委託契約のあり方、さらに奈良市の政策評価の仕組みについて質問しました。
休日や夜間に急病となった市民を受け入れる応急診療所は、地域医療を支える重要な施設です。一方で、その運営には毎年多額の公費が投入されています。
今回の質疑で特に問題提起したのは、奈良市が年間約1億円の委託料を支出しているにもかかわらず、その具体的な使途別の金額を把握していないという点です。
さらに、過去の契約や行政資料を調査した結果、同様の委託料について、支出額を確認できた11年間だけでも約17億6,000万円が支出されていたことが、総括質疑で明らかになりました。
市の実質負担は年間約1.4億円。その約7割に相当する委託料の内訳が不明瞭
令和7年度の休日夜間応急診療所の決算は、以下のようになっています。
| 項目 | 令和7年度決算 |
|---|---|
| 診療所の運営経費(歳出) | 約2億5,985万円 |
| 診療報酬などの収入 | 約1億2,254万円 |
| 収支差額(市の実質負担額) | 約1億3,731万円 |
| うち「診療報酬分委託料」 | 約9,959万円 |
つまり、市の実質負担額約1.4億円の約7割に相当する規模の委託料について、何にいくら使われているのかを市が把握していないという状況です。
厚生消防分科会で、この「診療報酬分委託料」の使途について質問したところ、担当課からは、医師報酬の加算分、薬剤の購入費・管理費、運営に関わる職員の人件費、その他必要経費等に充てられているとの説明がありました。
しかし、それぞれの項目に「具体的にいくら支出されているのかについては、市は把握していない」との答弁でした。
もちろん、これらはいずれも診療所の運営に必要となり得る経費であり、委託料が不適切に使われていると指摘するものではありません。
問題は、公費を支出する奈良市自身が、その具体的な内訳を十分に把握していない中で、金額の妥当性をどのように検証しているのかという点です。
必要な経費とその金額を把握できなければ、現在の委託料が適正なのか、あるいは効率化する余地があるのかを客観的に判断することも難しくなります。
11年間で約17億6,000万円。長年続く委託料の実態
9月28日の総括質疑では、この「診療報酬分委託料」がいつから始まり、これまでにいくら支出されてきたのかについて質問しました。
健康医療部長からは、契約関係の文書は保存年限の関係で令和3年度以降のものしか確認できず、開始時期を特定できる資料は確認できなかったものの、過去の予算資料から、少なくとも平成25年度には同様の委託料が計上されていたとの答弁がありました。
さらに、過去の支出総額について質問したところ、健康医療部長から以下の具体的な数字が示されました。
| 対象年度 | 支出総額 |
|---|---|
| 令和元年度~令和7年度(7年間) | 11億7,365万7,601円 |
| 平成26年度・平成28~30年度(4年間) | 5億8,677万4,000円 |
| 確認できた11年間の合計 | 約17億6,043万2,000円 |
平成25年度から令和7年度までの13年間のうち、平成25年度と平成27年度については決算額が確認できていないため、実際の累計支出額はさらに大きい可能性があります。
少なくとも11年間で約17億6,000万円もの公費が、この委託料として支出されてきたことが、市の公式答弁によって明らかになりました。
この内容については、9月29日付の奈良新聞でも取り上げていただきました。
📰 奈良新聞(2026年9月29日付)「補正案など34件認定」
長年にわたって多額の委託料が支出されてきた一方で、市が現在その具体的な使途別の金額を把握していないという状況について、契約内容や支出の妥当性をどのように検証してきたのか、疑問が残ります。
市長にも直接質問。委託料の妥当性はどのように確認しているのか?
今回の総括質疑では、市長にも直接見解を求めました。
これに対し、市長からは、これまでも委託先との協議の中で具体的な金額を議論してきたこと、また、毎年の予算編成において、事業内容や費用の適正性を精査した上で予算を措置し、議会の議決を経て執行しているとの答弁でした。
しかし、約1億円の委託料について、市が具体的な使途別の金額を把握していないという問題に対して、どのような資料や方法によって適正性を確認しているのか、また今後どのように改善していくのかについて、具体的な説明は一切ありませんでした。
委託料の総額について協議することと、その使途別の明細を把握し、妥当性を検証することは、必ずしも同じではありません。
また、議会の議決を経て予算を執行していることは当然ですが、その前提として、行政自身が支出の根拠を十分に把握し、市民に説明できることが重要だと考えています。
今回の質疑は、委託先を批判するためのものではありません。
公費を支出する奈良市自身が、その使途と金額の妥当性をどこまで把握し、市民に説明できるのか。
そこに、今回の質疑の大きな問題意識があります。
患者数に応じた医師配置の見直しも提案
休日夜間応急診療所の医師配置についても質問しました。
令和7年度の深夜0時から翌朝6時までの受診患者数は、年間752人。1時間当たり約0.3人、一晩平均約2人の受診者に対して、医師2人が配置されていることが明らかになりました。
一方、年末年始などの長期休暇には患者が集中しており、限られた医療人材をより効果的に配置する余地があると考えています。
もちろん、深夜帯の救急医療体制を維持することは重要ですが、患者数の少ない時間帯の配置を見直し、繁忙期の診療体制を手厚くするなど、実際の受診状況に応じた柔軟な医師配置を提案しました。
これに対し、保健所長(健康医療部理事)からは、市としても課題を認識しており、委託先とも問題意識を共有しながら検討を進めているとの答弁がありました。
今後、具体的な改善につながることを期待しています。
総合計画に掲げた目標、その評価は適切だったのか?
今回、もう一つ取り上げたのが、奈良市の政策評価のあり方です。
平成25年度の包括外部監査では、休日夜間応急診療所について指定管理者制度との比較検討が求められ、平成28年度からの第4次総合計画にも、「より効率的な運営を図るため、指定管理者制度の導入を目指す」と明記されていました。
しかし、最終的な評価にはその達成状況や検討結果が記載されず、次の第5次総合計画では目標自体がなくなっていました。
総括質疑では、委託先との協議で導入が困難と判断したとの説明がありましたが、その協議や判断の根拠となる記録は、現時点で確認できていないとの答弁でした。
私は、こうした重要な政策判断の記録が確認できないことについて、奈良市行政文書管理規則との関係でも問題提起しました。
行政が自ら掲げた政策目標について、達成状況や未達成の理由を適切に自己評価し、その結果を次の政策に反映できているのか。
政策を見直すこと自体が問題なのではありません。見直しに至った経緯を記録・検証し、市民に説明できることが重要です。
今回の質疑では、担当部局任せにするのではなく、庁内で横断的に政策評価を確認する仕組みの必要性も指摘しました。
必要な医療を守りながら、公費の透明性を高める
休日夜間応急診療所は、通常の医療機関が休診している時間帯にも診療を行い、市民の健康と安心を支えています。
休日や深夜の医療体制を維持するためには、患者数が少ない時間帯であっても医師や薬剤師などの専門職を確保する必要があり、一定の公費負担は不可欠です。
私自身、医師として医療現場に携わる立場からも、その重要性を十分に認識しています。
だからこそ、医療従事者の協力によって支えられている診療体制を維持しながら、より透明性の高い、持続可能な運営のあり方を考えていくことが重要だと考えています。
今回の質疑は、委託料の削減を前提としたものではありません。
「何に、いくら必要なのか」を市自身が把握し、その支出の妥当性を検証して、市民に説明できること。
そして、実際の患者数や医療ニーズに応じた効率的な運営を目指すとともに、過去に掲げた政策目標についても適切に評価し、次の政策に反映していくこと。
こうした取り組みの積み重ねが、限られた財源の中で必要な市民サービスを守り、より良い行政運営につながると考えています。
今後も、医師としての専門性と市議会議員としての立場の双方から、地域医療の維持と、公費の透明性・妥当性の確保に向けて、引き続き取り組んでまいります。