



議員になって早一年。次の一年間も、前年度に引き続き厚生消防委員を務めることとなりました。
新メンバーでの厚生消防委員会が8/3開催されましたので、私の質疑内容についてご報告いたします🙋♂️
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市立奈良病院への10億円無利子貸付――他の選択肢は十分に比較されたのか
令和8年度予算案で提案された、市立奈良病院への10億円の無利子貸付案。
背景となっている市立奈良病院の経営状況と、今後の大型設備更新に対する市の支援の必要性や支援策の検討状況について質疑しました。
🔵診療報酬改定で「約4億円増収」――しかし、そのまま経営改善になるわけではない
前回5月の厚生消防委員会では、市は診療報酬改定による市立病院の具体的な増収見込額を把握していない、との説明がありました。
そこで今回、改めて確認したところ、医療政策課から、今年度の診療報酬改定により約4億円の増収を見込んでいるとの答弁がありました。
また、その約半分にあたる約2億円は職員の処遇改善等に充てられるとのことでした。
一方で、病院会計においてはその材料費や委託費だけでも年間50~60億円規模の支出額となっており、昨今の仕入れ価格や委託料の高騰を踏まえると、仮にこれらが数%上昇しただけでも、数億円規模の負担増となります(2025年の病院経営定期調査では、2023年から2024年における材料費・委託費の価格上昇はそれぞれ+3.5%、+4.6%と報告されています)。
つまり、
診療報酬改定による約4億円の増収
→ 約2億円は処遇改善等
→ 残る部分も物価高騰などで吸収される可能性
があり、単純に「4億円増収するから病院経営が大幅に改善する」と見ることはできません。
副市長からも「楽観できない」との趣旨の答弁があり、今後、月次の収支実績を確認し、秋頃を一つの目安として経営状況を見ていくとの説明がありました。
🔵約20億円の電子カルテ更新。10億円無利子貸付だけが選択肢だったのか
市立奈良病院では、電子カルテをはじめ大型設備の更新が控えています。
3月議会では、市から指定管理者に対して10億円を無利子で長期貸付する予算案が提出されました。
しかし、議会では返済計画などについて十分な協議がなされていないことが明らかとなり、貸付金の貸倒れリスク等も踏まえて、この予算案は議会の審議を経て否決されました。
そこで今回確認したのが、
「そもそも、10億円無利子貸付以外の財政支援手法を十分に比較したのか」
という点です。
市と指定管理者との協定書には、設備更新に際して資金調達が十分にできない場合、病院事業債を活用する仕組みが記載されています(委員会の補足資料参照)。
病院事業債とは、公立病院の設備整備や更新に際して、自治体が活用できる地方債です。その元利償還金の75%を病院側が負担し、残りの25%を市が負担しますが、市には普通交付税が全額措置されるため、市の実質的な財政負担は0円となる制度です。
私はこうした制度を含めて適切に比較した上で、市が予算案として10億円無利子貸付を選択したのかどうかを市に確認しました。
🔵問題は「病院事業債を使わなかったこと」ではなく「十分に比較したのか」
委員会では副市長から、「市が実施主体となれば公平・公正な入札による調達をやり直す必要があり、指定管理者が既に調整していた価格より高くなる可能性を考えた」との説明がありました。
一方で、「では市による調達ならば、どの程度高くなると見込んでいたのか」を尋ねると、「入札前なので金額は分からない」との答弁でした。
私がこの答弁で問題だと考えたのは、
「病院事業債を使わなかった」
という結論そのものではありません。
10億円もの公金を使った無利子貸付を提案するのであれば、
複数の選択肢について費用・リスク・実現可能性を比較し、その根拠を示したうえで政策判断を行うべきだったのではないか。
という点でした。
🔵実際に比較すると、負担額には大きな差
今回、医療政策課・財政課から提供された数値を用いて、約20億円の設備更新を想定したシミュレーションを委員会で提示しました。
① 指定管理者が20億円を直接借入
指定管理者の総負担:約21.54億円
② 市が10億円を無利子貸付+指定管理者が10億円を借入
指定管理者の総負担:約20.77億円
→ ①より約0.77億円軽減
③ 市が20億円を病院事業債で調達
指定管理者の負担:約15.89億円
→ ①より約5.65億円軽減
④損益分岐点(指定管理者側の財政的メリットがなくなる入札価格)
病院事業債による入札額が27.12億円の場合、指定管理者の負担額:約21.54億円
→ ①と同額
と試算され、これは「入札額が27.12億円以下であれば、市がリスクを増やすことなく、病院側の財政負担を軽減することが可能となる」ことと理解されます。
なお前述の通り、市の負担分については、普通交付税が全額措置される前提においては、実質的な一般財源負担は0円です。
もちろん、これは一定の金利・償還条件等を置いたシミュレーションであり、実際の融資条件等によって金額は変わります。
しかし、これらのシミュレーションは、私が今回の委員会質問のために所管課に要求した数値を元に「新たに作成した資料」です。
つまり、予算案提示の時点では、
「入札額がいくら以上であればこの制度を使うメリットがなくなるか」
「市の入札にすると、購入価格がどれくらい上がるか。また、損益分岐点となる27.12億円を超える可能性があるのか」
について、具体的な数値を用いた検討を行わず、市・病院の双方にとって有利になりうる制度について、十分に検討されないまま支援策を決定してしまった政策判断の過程が明らかとなりました。
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市立奈良病院は、市民の命と奈良市の地域医療を支える重要な病院です。
だからこそ、「支援する・しない」という二択ではなく、限られた公金を使って、どの方法なら最も持続可能な形で地域医療を守れるのかを検討する必要があります。
今後も病院の経営状況や大型設備更新の動向を踏まえ、数字やデータを用いた自分なりの検証を続けていきます。