お知らせ

11月委員会のご報告

2025.11.07

11/5に開催された厚生消防委員会では、奈良市が来年度に予定している子ども医療費助成の拡大、具体的には未就学児の医療費の無償化を見据えて、今後の医療政策について質問しました。

9月定例会で私が提示したデータが示す通り(9月定例会のご報告)医療費の無償化により医療需要が増加することは論文報告や奈良市の医療費データからも明白であり、救急医療の混雑や医療費の増大を抑制するための施策が必要です。市民が本当に治療を必要とする時に医療機関を受診できなくなる状況を避けるためには、奈良市には2つの選択肢があると考えます。

  • 「医療体制の充実化」=患者さんが増えても対応できるように、医療の受け皿を強化する
  • 「適切なワクチン施策の推進」=そもそも受診する患者さんの人数を減らす

「医療体制の充実化」—奈良市が運営する休日夜間応急診療所は、平時の休日には平均約100/日が受診します。一方で、昨年の年末年始(12/30-1/3)にはその4倍にあたる約400名/日が受診しました。しかし対応する医師は通常通りの2名体制が基本で、混雑する12-19/22-24時のみ3名体制という、平時とさほど変わらない診療体制を余儀なくされ、結果的に患者さんには最長5時間という待ち時間を強いることとなりました。平時の夜間診療には余裕があることから(この枠も医師2名体制)受診者数に応じた診療体制の適正化(連休や年末年始など、混雑が予想される日程に限って人員を強化するなど)が必要と考えられます。診療所の運営は主に奈良市医師会が担っていることから、市と医師会とが綿密な協議の上で足並を揃え、混雑緩和に努めて頂きたいと、市側に提案しました。

「適切なワクチン施策の推進」―受診が必要な患者数を減らす/発症を予防することで、医療需要を抑制することが、医療体制の充実化と並行して必要です。市側の見解としても、昨年末の応急診療所の混雑はインフルエンザの急拡大が原因との答弁もあり、これには一部の地方紙で報道されている通り、コロナ禍以降はワクチン接種率が低下していることが、一因となっているのではないかと個人的に推察しています。物価高もあり、費用の面(子どもには2回接種が必要)から、子育て世帯がワクチンを打つことをためらうケースもあるのでは、と懸念しています。関西では兵庫県神戸市や大阪府高槻市などで小児インフルエンザワクチンの接種費用補助を行っており、奈良市でも同様の施策を行うことで、奈良市の異常な救急医療の混雑を緩和できる可能性があります。健康増進課が出した試算によれば、インフルエンザワクチン接種に、中学生以下1回あたり2500円の補助した場合には約7000万の予算が必要となりますが、対象者を未就学児以下に限定し、補助額を1500円とした場合には約1800万円での施行が可能になるとのことでした。

来年度以降は未就学児で特に受診頻度・医療費の増大が予想されることから、私からはこの試算を踏まえ、未就学児に対する1500円/回の補助を提案しました。また予算額に余裕があれば、家族内(兄弟姉妹)での感染拡大リスクが高い多子世帯に追加補助することを提案しました。インフルエンザによる社会的なデメリットは、医療機関のひっ迫に限らず、親の休業による経済的損失が挙げられます。特に未就学児では学級閉鎖や出席停止による親の休業リスクが高く、私が行った試算では、親の休業により奈良市全体で総額1億-1.5億円ほど世帯収入の低下が想定されています。市側からはワクチン補助については「検討する」とのお返事で、前向きなとは言えない内容ではありましたが、最小限の投資で最大の効果を得られるよう、対象者や補助額を十分に検討して施策をぜひ進めてもらいたいと願っています。

最後に、政策立案の要となる医療政策課をはじめとして、市の健康医療部に医療知識のある専門家が明らかに不足しており、適切に医療情報の把握・解析ができていないことを指摘しました。課内でも人材不足を憂慮しているとのお話があり、現場の人材不足について指揮を執る人間が把握できていない、あるいは対応できていない現状が浮き彫りになっています。時にはトップダウンの指示も必要ですが、実務を行う現場からのボトムアップに基づいた業務体制の変更・強化を進めていく柔軟さが不足していると感じています。「専門職を育てていく」との市長の答弁が口先だけで終わらないよう、私から強くその実践を求めて、答弁を締めくくりました。

今のところ、医療課題を取り上げる議員・委員が少ないため、少なくとも今年度は重点的に私から医療課題を取り上げるつもりですが、将来的には超党派で、市議会全体として医療課題を重要議題の1つとして取り扱えるよう、同僚議員とも取り組んでいきたいとと考えています。9月定例会で市に提案した「日本一健康なまち・奈良」を目指して、まだまだ活動は続きます!